二十四節季では、1月5日頃が「寒の入り」、立春の2月3日までが「寒の内」「寒中」にあたります。
一年で最も寒い時期です。
昔から、おばあちゃんの知恵として「お腹を冷やさないように」と言われてきましたが、健康と美容に関心のある女性にとって、からだを温めることは、四季を問わず、大事に心がけることになってきたように感じます。
昔はなかった夏のクーラーや、冷たい飲食物の誘惑…キンキンに冷える環境を生き延びる(大袈裟?とは言い切れないと思います…)ため、今や、腹巻きだっておじさんアイテムというイメージではなくなりましたよね。
温かくすこやかな暮らしのための工夫を、皆さんそれぞれに重ねていらっしゃいます。
そんな生活の知恵からいっても、一年で最も寒い今は、温かい飲み物が嬉しい時期ですが、私の明治生まれの曾祖母は、「寒の水」ということを言っていました。
その思い出のために、私はこの寒さのなか、ほんの少しだけ、あえて水を飲みます。

俳句にも「寒の水」という季語があります。
「寒中」の水は、とても冷たく澄んで、腐らないことから、神秘的なものとされ、餅つきや酒造りなどに用いられました。
とりわけ、寒中九日目(1月13日頃)の水は、「寒九の水」とよばれ、非常に良い水として服されていたそうです。
真冬に冷たい水を飲むなんて、ちょっと身震いが出そうですが、昔は井戸水を汲んでいたので、水温は外気温よりも高かったそうです。
寒九の水、今風にいえば、大地のパワーを頂くような感覚だったのでしょうか。
令和の今、私が飲むのは、井戸水ではありません。さすがに冷たいので、ほんの少しだけ。
大地のエネルギーが伝わる地下水ではありませんが、春への変化を感じ取ろうと試みる、私のささやかな年中行事です。
いつか、機会があれば、井戸で汲んだ寒の水を飲んでみたいものです。

寒の水ありありと身体髪膚かな
山田みづえ
命あり家あり寒の水を飲む
坂田栄三