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塗り絵には創造性がない?

塗り絵の枠線は服従心を育てる⁉

昨年のこと、外国の日本語版ニュースサイトで、「塗り絵は服従心を育てようとするもので、個性を奪う」という趣旨のコラムを読みました。塗り絵アートセラピーのセラピストとしては、とても興味を惹かれました。そのコラムはこんな内容でした。

 

 

新型コロナウィルスの影響による巣ごもり生活の中で、大人からも人気を集めている塗り絵を、自分もやってみた。けれども、次第に想像力が減退したと感じてやめてしまった。

 

塗り絵の歴史は、そもそも19世紀に端を発する、子どものしつけ目的の教材だった。そして、塗り絵の枠線は、他人が設計した既存の世界に過ぎず、その中に色を付ける(しかもはみ出さないように!)ことは創造性を養うどころか、「社会の枠からはみ出すな」というメッセージに従うことであり、新しいものを創ることを断念することである、というようなものでした。

 

また、塗り絵の人気図柄の多くが「現実逃避と消費文化を象徴するユニコーンや、商品で埋まった店舗の絵」のような「幻想」的なものであることにも倦んでいます。

 

 

このコラムが執筆された時期は、2020年9月。ロックダウンを筆頭とする様々な社会的制約に異議を唱え、自由を主張する人々の声が、世界中で大きくなっているニュースも増えた時期でした。そんな閉塞感が、塗り絵の枠線に対する見方に影響を与えたのではないか、と感じます。

塗り絵アートセラピー作品例の画像 創造性がない?のか

枠線は補助線にすぎない

私がこのコラムを読んで最初に感じたことは「枠線って、そんなに後生大事なものかな?」ということでした。

 

大人の塗り絵といってもいろいろな種類があり、それぞれ意図するところが違います。たとえば、「脳トレ」目的の塗り絵の場合、名画の模写や、図鑑に載っている植物画のような枠線が与えられ、「見本」と同じような出来上がりを目指すものもあります。また、おとぎ話のようなファンタジーの世界や、オシャレなファッションや街並みのイラストに、自分好みの色をつけて楽しむタイプのものもあります。確かに、これらのような塗り絵に対しては「枠をはみ出さないように」とか「キレイで素敵な配色で」とか、枠線の世界の中での出来上がりが気になりがちかもしれません。

 

いずれにしても、自分が楽しめて、リラックスのひと時をもてればよい、という意図で色えんぴつを握るのであれば、「上手に」塗ることを重視しなくてもいいのにな、と思います。このコラムの筆者は、一時期「巣ごもり生活」の徒然に、塗り絵アプリをダウンロードして、一生懸命塗ったり、はみ出した色を消したり、「上手な仕上がり」を意識して頑張り過ぎてしまったようです。

 

一方、塗り絵アートセラピーでは、塗り絵の枠線のとらえ方は自由です。アバウトといっても言いかもしれません。

私は、枠線は補助に過ぎないと思っています。

 

筆をすべらせたり、色えんぴつやクレヨンの手ごたえを感じながら、色を目の前にあらわしてゆくと、思いもよらない心身のやすらぎがもたらされます。でも、枠線の一切ない白紙(何色でもいいのですが…)に「よーし、自由に描こう!」と言われても「絵なんて描けないよ」という人(私含む)にとっては、それは、ものすごくハードルが高い行為です。(ゼロから描くなんてストレスです…)

 

塗り絵の枠線は、そんな絵が描けない人のための補助ツールといってもよいもの。服従しなけれなばならないガチガチのルールではありません。

 

実際、塗り絵アートセラピーの塗り絵では、線をはみ出す/はみ出さないは、問題になりません。枠線を塗りつぶして無かったことにしたり、空白のまま塗り残したりすること自体も、ひとつの表現ととらえます。既存の枠線にない線を描き足したり、切ったり貼ったりも自由です。

塗り絵の創造力

そして、大事なことは、今の自分にフィットする図柄を選ぶことです。枠線が補助だとすれば、自分が表現したいものに近い補助が必要ですからね。どんな図柄を選ぶか、そこから創造は始まっています。「え?私ってこんな絵に興味あるんだ?」と自分でも思いがけないような図柄に、想像以上に心が洗われたりもするものです。(だから、塗り絵は面白い)

 

思考をこねくり回し、言葉を探さなくても、「今の自分」が表れるのが塗り絵の魅力。塗り絵は、想像力も創造力も養います。塗り方によっては。たとえ、同じ図柄を同じ色で塗ったとしても、その色に何をのせているのかによって、表現されたものは異なります。その人だけの創造した作品なのです。そんな塗り絵も、ぜひ体験してほしいなあ…と思います。

 

塗り絵アートセラピー作品例の画像
塗り絵アートセラピー作品例

写真の塗り絵、下の左側と真ん中は、同じワークショップで、二人の方が同じ図柄を塗った作品です。いかがですか?

枠を超えて

ところで、このコラムで、とても共鳴した部分があります。文末で「誰かから塗り絵を渡されたら? そんなときは下絵をビリビリと破り裂いた上で、その紙片を集めてコラージュを作るようおすすめする。」と言っているのですが、それ!いいじゃない、面白そう!と思います。そのうちトライしたいです。

 

 

ごきげんよう

 

 

 

 

▼参考

社会の「枠」をはみ出すな 塗り絵に潜む服従のメッセージ

 

https://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2020/09/post-449_2.php