15年ほど前でしたか、友人が「いまにパソコンよりもっと便利なモノを皆が使うようになる」と言っているのを聞きました。「なんだかんだ言って、パソコンは操作が難しい。指で画面を触れば、誰でも使いこなせるようなモノが主流になるといわれてるよ」と。その時点で、パソコン操作はメールとネット通販くらいしかできなかった私にとって、???とピンとこない話でしたが、印象には残りました。今になって、スマホの隆盛ぶりを見ると、ああ、こういう事だったのか、と思います。
テクノロジーは日に日に進歩していますが、ヒトのからだは、もう何万年この方、変わっていません。思えば、環境の変化によくついて来てくれている、私たちのからだです。
それにしても、便利と裏腹の複雑さに、ちょっと疲れてしまう変化の速さではあります。
でも、人間の進歩は今に始まったことではありません。
現在からみれば超牧歌的にみえても、いつの時代も、その時どきのアップデートの最先端に、私たちの祖先は生きていたといえるでしょう。そして、「昔はよかった」「今のヤツは」と言いながら、進歩の果実を享受していたことでしょう。私たちと同じように…人間の中身は、変わらないことが多いように思います。
そんなことをリアルに感じるのは、江戸時代に「養生訓」という健康ハウツー本がベストセラーになった、と知ったときです。

18世紀、そう、赤穂浪士の討ち入りの10年ほど後。貝原益軒という学者(医術の専門家ではありません。儒学者です)が80歳を超えて著した書物です。益軒がなくなったのは85歳。当時の80歳超えは、たいそうな長生き。その人が、「私はこうやって元気に長生きしている」と最晩年にシェアした健康法の本なのです。
あやかりたい、と思って「養生訓」をもとめた江戸時代の人たちに、親近感が湧きませんか?
貝原益軒は、ただ寿命を延ばせばいいとは考えてはおらず、長生きした方がよい理由は人生を楽しむため、とハッキリいっています。現役長寿の人から、長生きするほど人生は楽しい、といわれれば、希望がもてますね。
ただ「アレを食べろ」「コレをするな」と指示するばかりでなく、どっしりとした人生観が横たわっています。
自分らしく生きたい、人生を楽しみたい。そのために必要な、暮らしの土台になる心身のすこやかさを、自分自身でデザインするための一冊、それが「養生訓」です。

とはいえ、何せ江戸時代の本ですから、ちょっと読みづらいのも確かです。
そこでお勧めなのがこちら。
「わがまま養生訓」 鈴木養平著 フォレスト出版
「養生訓」に沿って、引用と読み解きをしながら、養生訓のベースにある漢方養生の考えかたを、わかりやすく解説しています。
文字も大きく、適度に配されたマンガのコーナーも親しみやすさをアップして、とにかく、やさしい読みやすい本です。
マンガの主人公は、仕事も趣味も家事も頑張っているけれど、最近疲れやすくてやる気がでないアラフィフの女性という設定。
江戸時代の人の知恵を、現代で実践できるような具体的はアドバイスも満載です。
著者の鈴木先生は、実は、私が現在まさに受講中の漢方スクールの講師です。受講中の先生が本を出されるとは、なんだか嬉しい出来事です。
興味が深まれば、ガチの「養生訓」もお勧めします!
ごきげんよう